フンデルトヴァッサー
フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー (Friedensreich Hundertwasser) はオーストリア出身の画家、彫刻家、建築家であり自然を愛する環境主義者でした。
フンデルトヴァッサーの出身地のウィーンには、彼の作品である幾つかの建物が観光地になっています。その中で有名なのが、1986年に完成した集合住宅のフンデルトヴァッサー・ハウスです。建物はカラフルで、自然との共有で緑が多いのが特徴です。

ウィーンで電車に乗っていた時に目に付いた建物がシュピッテラウごみ焼却施設です。施設からの排出物に最新の浄化技術を採用し、環境に配慮した焼却施設です。ゴミ焼却の際にエネルギーも発電しています。

フンデルトヴァッサーは、シュピッテラウごみ焼却施設1987年に火災後に外観を再設計しました。
フンデルトヴァッサーは1961年は1年ほど日本に滞在し、その後日本人女性と結婚していた時期があったそうです。
日本では、キッズプラザ大阪にある「こどもの街」や、大阪の舞洲にある清掃工場、舞洲スラッジセンターの外観をデザインして話題にあがっていました。建物を見ればカラフルで、直線があまり使われてないという個性的なデザインが特徴で、一度みると忘れられないデザインです。
今回はフンデルトヴァッサーがデザインしたオーストリアのグラーツ近郊のベルンバッハ (Bärnbach) にある聖バーバラ教会に行ってきました。
聖バーバラ教会 (フンデルトヴァッサー教会)
この教会の守護聖人は聖バーバラなので聖バーバラ教会ですが、ベルンバッハ教会やフンデルトヴァッサー教会とも呼ばれています。
1957年に奉献された聖バーバラ教会は、安価で建てた教会だったので、1979年には改修することになりましたが、資金不足で計画もなかったそうです。
当時の牧師がフンデルトヴァッサーの作品展を訪れた時に、外観のデザインをアーティストに任せられないかと考えました。1984年に牧師の知り合いの彫刻家の元へフンデルトヴァッサーが訪ねてきました。その時に彼は教会を訪れ、報酬を免除して引き受けることにしたそうです。

その後、再建へ向けて協議が進められ、外観だけではなく、内部の一部もデザインすることになりました。1988年に教会が完成してからは1991年まで教会の周りにあるアーチのある道などを手掛けたそうです。
高さ約36mの塔の上には金色の玉ねぎの形をしたドームがあります。このドームは2016年に修復されています。この塔に下にあるアーチが教会への入口です。


アーチの上にはIHSとその下に文字が書かれています。
ギリシャ語でイエス・キリストのイエスを「IHΣOYΣ」と書き、始めの3文字「IHΣ」のΣをラテン語のSに置き換え、イエスの短縮形としてIHSを使うそうです。
下の文字の様なものは、聖母マリアのモノグラムです。マリアの名前を示す文字などを組み合わせて作られるのでMを使うことが多いです。


教会内部はシンプルで明るい雰囲気でした。
祭壇には大きな木製の十字架にキリスト像がつけられています。十字架の後部は、フンデルトヴァッサーの作品で装飾されています。

教会は主要な宗教や文化などの12の門 (アーチ) に囲まれています。1つはなにも描かれていない非信者の門があります。11の門は宗教のシンボルなどが描かれています。
キリスト教は、聖書と十字架が3つ並んでいます。教会前にシンボルの一覧があって、十字架はエルサレム十字とコプトと書いてありました。十字架にも色々種類があるなんて、今まで知りませんでした。


日本からは神道が描かれています。シンボルである鳥居、日本と漢字で表記した字の間に昇る太陽が描かれています。


日本の漢字の横は八卦(古代中国発祥で宇宙のあらゆる事柄を8つの象徴で表したもの、易における8つの概念)です。右側にあるのは仏教のシンボルである法輪(ダマチャクラ)と2頭のカモシカです。
鳥居が描かれているアーチには、陰陽のシンボルと仏陀が描かれています。



ユダヤ教、ヒンドゥー教やイスラム教のシンボルの門もありました。
色々な文化や宗教が融合していて、今まで行った教会のなかではトップクラスの風変わりな教会でした。
教会再建後のベルンバッハの町は、芸術の町に変化していき、町の中にも個性的な作品がみられます。
教会前にある案内板を見て、教会近くにあるベルンバッハ市立公園を歩きました。

オーストリアの芸術家で、ウィーン幻想派の1人であるエルンスト・フックス(Ernst Fuchs)は、モーゼスの噴水、オーストリアの画家であるロベルト・シェッペル・シュペル ( Robert Zeppel-Sperl) が市立公園に隣接するベルンバッハ中学校拡張時に外壁のデザインをしています。


土曜日で中学校も休みのようで、公園には一組の家族しかいなかったので、ゆっくりと散策することができました。
今回、ベルンバッハに行くきっかけとなったのが、クラーゲンフルトのミニムンドゥスです。
次回はクラーゲンフルトを中心に書きたいと思います。